唯一の味方だと思ってた人がそうじゃなくなった瞬間。ヒーローは死んだ。ロックンロールも鳴り止んだ。終わったんだよ。全部な。今日まで生きてきてよかったって本気で思った帰り道、そんなこと初めて思った、生きてることをずっと呪っていたのに、終バスがなくなって30分かけて家まで空を見ながら歩いて涙を流したことを思い出す。人生がたしかにきらめいた瞬間だった。その日から今の今まで、いよいよ二度となかった。就活で第一志望の会社から内定をもらえた瞬間も、内定報告でみんながおめでとうと言ってくれた瞬間も、仕事で大きいプロジェクトを完遂してみんなが喜んでいた時も、これからどうやって生きていこうかと悩んで、転職活動をしてみていくつか内定をもらった時も、なにもきらめかない。何も心が動かない。何がおめでたいのかわからない。俺は人生がきらめく瞬間のために生きているはずなのに、もう何年もきらめいてない。このためだったら俺は生きててもいいと思える瞬間を心待ちにしている。
恋は人を変えてしまう。そんなことないと彼は言うんだ。でも確かに変わった。間違いなく変わった。変わらないわけない。結婚して変わらないわけないだろう。誰も傷つけたくないと言うその言葉で俺は傷ついている。傷ついている!傷ついている!誰も傷つけたくないという言葉は、誰も傷つけ(たく)ないという宣言は、傷つけたときに癒すことを最初から放棄する、傷つけるかもしれないということを最初から考えていない人が発する言葉だろ。
さよならだ、もう全てからさよならしたい、したかった。何にも縛られたくない、誰かの承認を得たいとか、仕事でもないのにやらなくちゃいけないと義務感を感じることとか、もう全部嫌だった。全部さよならしたかった。過去の自分、自分が好きだったもの、自分が今惰性でやっていること、すべてすべてすべて!!!!!でも何もさよならできない。苦しい。飛びたい。飛んじゃいたい、そういう人間でありたかった。でもそうじゃない。そのように神は私を造らなかった。終わらせることもできない。
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