アイスクリームと獅子

好きなものの話、身勝手な文芸

個人の超感想

M-1グランプリ個人の超感想

敗者復活
令和ロマンが一番面白かった。そのツッコミどんくらい通じるの?っていう言葉が出てくるカタルシス。MOROHA?ってツッコミめっちゃ面白くて、もう「夢をかなえてドラえもん」がめちゃくちゃ熱い心内をビートに載せる曲にしか聞こえんくなった。結構今MOROHAって有名アーティストなの?エミネムとかCreepy NutsくらいにMOROHAって位置してるのだろうか。
「じゃあこの81点はみんなが好きに使ったらいいですよ〜」ママタルト、こんな棘のない言い方がすぐ思いつくのすごい。みんなで好きにしたらいいって言うとちょっと棘ある。ダンビラムーチョうたうまぁ。トランペットみたいなやつほしいんだがあれはなんなんだ。かもめんたる、とてもかもめんたるでよかった。

勝戦
ウエストランドは悪口漫才なのか? ぼやき漫才なのか?  私は単にそういうようには思わない。人を傷つけない笑いが席巻している世の中において、揺りもどしとしてのウエストランドの優勝、みたいな評がこのあとわんさか出てくると思うとつまらんなあという気持ちになる。
ウエストランドが2年前最下位になったときから私は彼らの漫才を良いものだと思っていたけれど、それは彼らが揺りもどしとしての誰かを傷つける漫才をしていたからというわけではなかった。今年の漫才は中川家礼二が言っていたあるなしクイズの型に乗っけたという寸評の通り、聞きやすいものに仕立てられたというのは思ったけれども、彼らがやりたい核は2年前と変わっていないと思う。
むしろ私がヒヤヒヤしたのはさや香のファイナルラウンドで、あー、モノガミー規範、ロマンチックラブイデオロギーにめっちゃ基づいた後半の盛り上がりには、しかしそれはさや香というクリエイターが悪いのか?というとちがうと思うし、なんなら私は彼らの漫才は面白いと思っていて普通に笑いながら見ていた(なんなら優勝かなと思っていた)。世の中はモノガミーやロマンチックラブイデオロギーに支配されていて、お笑い芸人というのは最大公約数を取りに行く芸なのだから、むしろ彼らの漫才を見て爆笑してしまう観客というか、そういったイデオロギーが蔓延っている世の中自体に、その嫌悪は向けたいと思う。

ヨネダ2000、ジャルジャルのピンポンパンゲームを高く評価したまっちゃんが低い点数をつけたのは意外だった*1し、漫才のフォーマットのようなものを評価する印象のある塙さんが「笑ったから」といった理由で高得点をつけていたのも意外だった。
ヨネダ2000を三連単の1位に据えていたのは、希望的観測であったけれども、跳ねるのではないかと言う気持ちもないわけではなく、スタジオの笑いの量は現場にいないとわからないとはいえテレビ越しでもなんとなく受けている感じは強く伝わってきていて、これはもしかするのでは?と思った。が、まあそうか、わからないもの枠として受け止められると言われればまあそうか、志らく師匠が高得点をつけていたのが、ランジャタイを見ていたからというところで、残念に思ったんだけれども、誰だったか、「このままでいってほしい」富澤さんかな?(うろおぼえ)がヨネダ2000に向けた言葉に、勝手に安心していた。

ウエストランドが1位になるのはまったくノーマークだったけど、ファイナルラウンドの3組を見たあと「この組に優勝してほしい!」と思った組が優勝したのは初めてだった。そんな結果に結局なった。
私の中での最高風速は完全に井口さんの「さくまさあーん!」だったが、それはあちこちオードリーでの井口さんの平場の堅実さというか、佐久間さんとの関係性があるのだなという感覚が自分の中にあるからこそ笑えるものなんだろうと思って、ファイナルラウンドの東京03ぶっ刺してるとこは少し個人的には引き気味になってしまったのは、自分の中にそれほどの情報がなかったから、なのかもしれない。言いたいのは、かの漫才が誰かを刺してるのはたしかにそうなんだけど、単に悪口を言ってるというよりは、たしかに井口さんは自分の言いたいことを言っているというのはそうなんだろうなと直感するんだけれど、ただそれをそのまま出しているわけじゃなくて、やっぱり漫才っていう演芸、伝えたいことっていうのがそのまま言葉になってるんじゃなくて、笑わせるための漫才というものに昇華されているとすごく感じる、フィクショナルというか。ネタですから、思ってることを言う、といいつつも、彼の平場を見ていれば、それはやはりネタであるからこそ、漫才という場であるからこそというのはすごくわかるし、芸なのだと*2。あまりうまい言葉が出てこないけれど。
とは言いつつも今書いているウエストランドについての分析めいた文は、絶対本人には見られたくないのだけれど(笑)。
だから私は彼らの「アナザーストーリーがうざい!」という「ボケ」に対してすごく共感したからこそ笑い、ウエストランドの漫才めっちゃいいなーと思うと同時に、彼らのアナザーストーリーで、彼らが母親に電話して泣く(これは例えばのひとつであり、物語を感動させるために仕立てる演出という意味)シーンを見たいと思うし、彼らもたぶんアナザーストーリーに出ることを拒否しないと思う(相席食堂のM1ファイナリストロケを拒否したゆにばーす川瀬名人みたいに)。


個人的な好みの話をすると、音符運びがめちゃくちゃ好きで、ウエストランド男性ブランコを抜いたとき、すごく複雑な気分だった。
なぜあんな発想を思いつくのかというところもすごいし、刃物で人間が切られるというちょっとグロテスクなんだけどあくまでそれは「音符」であってファンタジックなところの可愛さみたいなものも感じられて、もうほんとに「このふたりなにしてんの?」って思いながらもめちゃくちゃ笑ってしまった。
反省会で、野田さんが卵を切るように切られる姿が想像できてすごかった、だとか、村上さんが足を交差して倒れるのが面白かった、などと評していたのを聞いてとても共感していて、彼らのマイム、うますぎるんだよなあと。あと、マヂラブが評するお笑いにいつも関心を寄せてしまうなあと改めて思った。
ロコディの1本目もめちゃくちゃ好きで、私は彼らが初めて敗者復活に出たときの、天ぷら合コンのネタが忘れられないのだけど、それを見たときの自由な感じを思い出した。縦に使ってダブルボケをするというね。
ヨネダ2000、去年のYMCA寿司見たときに惚れてしまったんだけど、リズム感がめちゃくちゃ気持ちよくて、「ペッタンコーペッタンコ」のリズムにDA PUMPが乗っかったところがすっごく気持ちよかったし、誠がめちゃくちゃ動いていろんな人の役をやるんだけど、餅つきの餅返し役に戻ってくスピード感とか、もうそんなんダンスやんとか思ってしまって、このネタもずっと何してんだよと思いながらめちゃくちゃ笑ってしまった。
山田邦子は1本目のめちゃ低得点からの真空ジェシカへの高得点の幅広審査にびびったのだけど、その後は落ち着いて(?)むしろ最近の審査は点差を狭めすぎアンドインフレ気味な感じがあったし、(すごいレベルの高い戦いだからそうなることは妥当でもある)審査員ニューカマーとして、途中からまったく気にならなくなった。

そんな感じで、読み手を置いてけぼりで書いたのは、あえてなんですが、つまりあんまりちゃんと読まれたくない、みたいな気持ちも若干ありつつ、共感してくれる人が共感してくれればええわ、と思いながらの駄文。
今年のM1もとても楽しくてあっという間にすぎていきました。
M1はやっぱり最高です。

*1:そのときこれ以上行ったら曲になっちゃうギリギリ、みたいなことを言っていたか

*2:優勝後、何度も言っていた「みんなが思ってそうなことを言ってる」といったエクスキューズに限らない