アイスクリームと獅子

アイスクリームと獅子

lionなのはわかっているよ

トリプルファイヤーのこと

最高、って割と簡単にいいがち。
私が最高を使うときは「かなり高」くらいの感覚なので滅多に使わないんだけど、別に特に意識せずに使う人が多いんじゃなかろうか。
やばい、みたいな感じで。

こんなことを言ってるからと言って、若者の言葉はけしからん的なことを言う気は毛頭ない。
言葉なんて時間と世代によって変わるし、変わらないと気持ち悪いし、変わるから面白いのだと、言語学を少しかじっている私としてはそう言いたい。

でもやっぱり、あんまり使われない言葉を聞くと嬉しくなるのも確か。
たとえば、「綺麗」って言葉あんまり聞かないね。
言う人がいたもんなら、そんな言葉を衒いなく言えるあなたが綺麗だよ、と思いますね。

なんの話?

最高の話。

こんなことを長々と書いたのは、私が最高だと言う言葉をそんなに軽い意味では使っていません、と言うのをまず伝えたかったからです。
今から私が最高だと思うものの話をしたいので。


あ、トリプルファイヤーってバンドのことなんですけどね。

最高だな、ってのは高校の時andymoriに対して思っていたんだけど、その頃すでにandymoriは解散していて、やるせなさがすごかった。
彼らの曲もやるせない雰囲気が漂っていて、「こういう人生だよなぁ、結局」なんて厭世家ぶっている高校時代の私よ、安心したまえ。

私はちゃんと今、ライブに行きたいと思えるバンドに出会っているぞ。解散していないぞ。バリバリ活動しているぞ。

「え?トリプルファイヤー?あの気持ち悪くて歌詞意味わかんないMVこの前見たけどあのトリプルファイヤーですか?」

そう。そのトリプルファイヤーです。


よく、「ライブはやっぱり違う、ライブで聴いてこそ真のバンドの良さがわかる」的なことをライブに行く人たちから聞きます。
私はこれまでそれがあまりわからなかった(これは私の感性が単に乏しいせい)。

だけどトリプルファイヤーです。
トリプルファイヤーはまじで違う。

ライブ映像を見てからCDを聞いた民(そんな民いるのか)なのだけど、CDを聞いてびっくり、「足りない!圧倒的に足りない!」と思った。
「そして歌詞が違う!」歌詞はどうやら毎回どこかしら変化するようで。

私の乏しい感性でも、多分音楽聴いたことない人間でも、「ライブと音源全然違う」というのがわかる。
この楽しさ。
今まで全然わからなかった数学の問題がやっとわかった!みたいなやつ(ちょっと違うけど)。


それから、ライブってこう、盛り上がらないとダメみたいな、こういう同調圧力ってどこにでもあるんだな。あるよね。
(ユニゾンなんかはそれに対する批判的な曲歌ったりしているし)
無論、みんなで手を挙げて体を揺らして声を出すと、その一体感で楽しくなるのはわかる。めっちゃわかる。やってみると楽しいのも知ってる。
でもそういうのあんまりできない側の人間もいるんだよな。

そこでトリプルファイヤーである。
カモン、という曲がある。

フロントマンが、「両手挙げろ〜体揺らせ〜声出せー!こんなもんじゃないだろー!!」って言うやつをそのまま歌詞にしてしまった曲。

これをライブでやると、客は誰も手を挙げず、さっきまで上がっていた声も上がらなくなり、最前でさっきまでめちゃくちゃ踊ってた人たちの体の揺れが少なくなるという魔法のような曲である。

フロントマンの吉田は客が無反応を貫くことをわかっていながら必死で盛り上げようとし、客はそれを見て頑なに応えない。
ここに一つの異質な共犯関係と謎の一体感が生まれ、会場はステージと客席と全て一体となるのである。

こんなスカしある?気持ちよすぎる。
もうこの曲の間はニヤニヤニヤニヤしてしまう。


この曲じゃなくてもニヤニヤニヤニヤしてしまうんですけどね。
もう歌詞がナンセンスというか、叫ぶ必要のないどこにでも転がってるけど誰も叫んでいないことを叫ぶんですよ。しかも何回も。

ふっと思うとなんでこの人こんなこと何回も叫んでいるんだろうかと笑ってしまう。
(急に核心ついたりしてくるので真顔になることがあるんだけど。それもまた魅力)

なのに曲は超タイトだし超踊れるし超かっこいいしで頭混乱する直前の感じになる。それが超気持ちよくなってわけわかんなくなって楽しくなってしまうんですよね。


MCもね、ロックバンドのフロントマンってなんかかっこいいこと言い始めるじゃないですか。
これが本当にかっこいいと思える場合もあるんですけど、急にJ-POPの歌詞みたいなこと言い出すと、お得意のナナメの自分が出てきちゃう。

その点吉田くんはいいぞ。中身のないことしか言わないからね。
最高だよ。


なにが言いたいかと言うと、わざわざ金を払って時間をかけて見にいきたいと思えるバンドがいままでいなかった私が、
友人に誘われてライブに行ってみても素直に楽しめなかった私が、
超楽しくて体もガンガンリズムに乗って踊れるバンドなのである。

これを最高と言わずになんと言う。