アイスクリームと獅子

アイスクリームと獅子

lionなのはわかっているよ

人に成る

女の子の成人式には、前撮りというものがあって、私は女の子なので、今日行ってきた。
着物屋さんに着くとすぐに、ヘアメイクが始まった。
「どんな感じにしますか」と問われ、「全然わからないので……」と自分史上最高に小さな声でボソボソと喋ると、ヘアスタイルの方は察してくださり、「できるやつだね、短いもんね」と、私の髪をいじった。
私の髪がヘアアイロンで暖まりながら巻かれて行くのと同時に、メイクさんが私の顔をいろんな道具で撫でた。
「普段メイクはしますか?」と訊かれ、「アイメイクくらいしかしないです……」といえばよかったものを「あんまりしません……」とダメな方に誇張して答えてしまって反省した。
「何色のシャドウ使いたいとかありますか?」と訊かれ、普段は使わない色を使ってみたいと思ったけれど、着物と合うか自信がなくて「うーん……」と曖昧な返事をしてしまった。何にも希望がない人間だったので、本当にやりづらかったと思う。
されるがままになっている間に考えていたことは相変わらず自意識過剰なことばかりで、心の中で何度も謝った。こんなに手入れされてない髪で来てしまってすみません、口紅を塗ってる筆(?)に唾液がついたような気がしてすみません、こんな地味で可愛くない人間が一人前の女みたいにさせてもらってすみません、など。
ヘアメイクが進んで行くに連れ、どんどんいつもの自分と変わっていき、最終的には誰だよこれ、となるというお約束の展開にはならなかった。鏡に映っているのは少し大人びてきらびやかになった私で、プロはすごいなと思った。
ヘアスタイルの人が、着物と私に似合いそうな髪飾りを三種類持って来てくれて、ほかの髪飾りも見たけれど結局そのなかの一つにした。やっぱりプロはすごいなと思った。私みたいな女として底辺にいる人間にも優しくしてもらって素直にありがたかったし嬉しかったです。
その後、着替える場所に移動すると、おばさん4.5人が待ち構えていて、「おめでとうございます」と言った。何を祝われているのかいまいちピンとこなかった。なすがままにされ、体は全く自分の意思を持たずに動いているようだった。平安の女の人はもっと何枚も何枚も重ねて着ていることを想像して、気が遠くなりそうになった。薄いピンク色の下を来て、上に襲を着る。袖を持っておいてと言われ、ずっとその位置で肩をあげていたので疲れた。あとで「疲れるから下げといていいよ」と言われたので助かったけれど、だったらもっと早く言ってほしかった。自分の選んだ着物は深みのある赤、一年ぶりに見たけれど、いいものを選べたなと思う。ああ、髪、こんなに巻いて貰わないで、もっとシンプルにしてくださいって頼めばよかったな、と今更アイデアが出てきた。どんどんと着物を着ている形になって行くと、お待ちかねのように帯が出てきた。金色の帯だった。我ながらすごいの選んだな、と思った。赤い着物に金色の帯って超おめでたいじゃん。祝う気満々じゃん。最後に緑色の紐と、帯締が登場して、完成した私の姿。慣れない濃い口紅が、着物を着たことで違和感が減っていてよかった。
続いて写真撮影。
まるで人形になったかのようにアシスタントさんに体や腕や足やらを動かされた。全く要領を得ないので、動かされるまま動かされて、自分が今客観的に見てどうなっているのか、どんなポーズを取っているのかがひとつもわからなかった。カメラマンさんに「笑って」と言われて笑うと、「笑ってない」と言われることの繰り返し。「首を傾けて、右、左、」言われるままにやっているうちに、どっちが右でどっちが左だったか分からなくなっていった。鞠を持たされ、「せーのって言いますから、笑顔で目の高さまで投げてキャッチしてください」という指示が、今までで一番難しい行為のように感じた。そして案の定、せーのよりもはやく投げてしまって「はええし!笑」と言われた。「カメラを向けられて笑う」ということに対する抵抗感が、私の奥の方から出てきて、うまく笑うことができない。まったく指示通りに動くことができない。ままならない。笑うことがこんなに難しいなんて。きっとぎこちない笑顔になっているだろうな。首を傾けるってなんですか。
写真撮影が終わり、写真を選ぶところへ移動すると、「緊張しましたか?」ときかれたので、またボソボソと「全然……うまくいかない……かったですね……」と答えた。
何が言いたいかというと、まあまあ楽しかったということです。