アイスクリームと獅子

気にしないでください

ショートショートショート

「どうしてそんなに優しくしてくれるの?」
私は彼にそう訊いてみた、彼は
「えー、そら、」
と言った後少し黙って、
「幼馴染だから?」
と語尾をあげて答えた。
幼馴染。
不便な言葉だ。幼馴染と言って仕舞えばそれでことが済んでしまう。どう考えても不便だ。
「幼馴染、ね…」
私は、私は彼のことをどう思っているのだろう。

「おい、目、真っ赤だぞ。何かあったのか」
何か、なんていつも起きている。
「うるさい。デリカシーないのかお前には」
「はあ?心配して言ってんだろ、一応」
もしも全部打ち明けられたら何か変わるのだろうか。多分変わるだろう。私のことを彼は受け止めきれなくなってきっとどこかへ逃げてしまう、こんな話、したら絶対。
「毎日同じ光景がフラッシュバックするの。毎日、毎日。そのたびに、泣きたくなって、授業中だろうが、電車の中だろうが、外を歩いていようが、泣いてしまいそうになる」
と言って仕舞えば楽だろうか。
彼はきっと私が言わんとしていることを理解できるだろう。あの日、五年前、そうか、もう五年も経つのか、あの日、トラックと私の家の車がぶつかった日、のことだと。でも私がフラッシュバックする光景自体はきっと彼の中にはない、なぜならその場にいたのは私と、トラックの運転手だけだから。
車の外に投げ出された私と私の両親と、何が違ったんだろうと考える。私は私の数メートル離れた場所に転がっている両親を見た瞬間に、死んでる、となぜかわかった。
「おーい、きいてんのかおめー」
という大洋の声でハッとする。
「聞くわけないだろ、お前の話なんか」
「ひっで!」
大洋は笑っている。私もつられて笑う。多分私はこういう微かな瞬間を失いたくないのだと思う。
チャイムが鳴った。うお、とか言いながら大洋は席に戻った。
毎日、毎日同じ画像が、私の、脳裏なのか、目の裏なのか、とにかく私だけに映るのは、本当に厄介だし、実生活に支障をきたしている。一瞬だけの、残像。五年前から残っている、残像。
だけど、と思う。
もし、この残像が映らなくなったら、私は不安でたまらなくなるだろう。自分が今持っている、辛い、苦しい、そういう気持ちがなくなるのが怖い。辛くて悲しくて仕方なくなる気持ちを手放したくないと思っている。
そんな話、やっぱり彼にはできない。