アイスクリームと獅子

美しいものと美しくないもの

流動するだけだ

金木犀の匂いが、数年前から全然いい匂いに感じられなくなった。
桜が咲いても、気持ちが前ほど動かない。

人は変わる。

冬が嫌いだった。
すぐに日が暮れて寒くて暗い空を見上げて、「もうすぐ冬になるのか、嫌だな」と思っていた。今はそれが嘘のように、気持ちがきりりと引き締まって、静かな気持ちになれて心地いい。
寒い寒いと帰った家に、こたつがあって、鍋が煮えている光景は、何にも代えがたいと思う。


新潮文庫が嫌いだった。今ではむしろ、嫌いな理由だったあの紐のしおりがないと不便で嫌だ。
文庫本の解説は読まなかった。いっそなくていいと思っていた。今では解説を読むのが楽しい。


悲しくて、寂しくて、嬉しい。
あの時から自分の中の時間が止まっていると思っていた。
でも今は、私は変わっている。
ちゃんと動いている。