アイスクリームと獅子

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レインツリーの国

有川浩の「レインツリーの国」を、数年ぶりに読み返した。
感想というよりは、紹介したいと思って書いてる。


有川浩の小説は、本作と図書館戦争全6冊、県庁おもてなし課、植物図鑑、等々、まぁまぁ読んでいるのだけど、とても読みやすいんですよね。

言ってしまうと軽すぎるんだけど。ライトノベルのよう。私は有川浩の小説は少女マンガと同じくらいのテンポで読める。
有川浩の小説はすきだけど、小説を読みたいと思って読むわけではないし、これらの本はライトノベルだと思ってる。


だけどこの「レインツリーの国」だけは少し自分の中での位置が違う。
何冊か、誰にでもお勧めできる本っていうのが私の中にあるのだけど、この本はそのうちの一冊に入る。
もちろんこれも文はとても軽くて読みやすい。だからこそ「誰にでも」勧められるものに入るっていうのもあるのだけど。

内容紹介

レインツリーの国というのは、ヒロインのひとみが運営しているサイトの名前。
主人公の伸行はそのサイトの本の感想の記事を見て、感動してメールを送る。
メールのやり取りをするうちに二人は惹かれあっていくのだけど、伸行が思い切って会おうと言うと、ひとみは頑なに拒む。


なぜならひとみは耳が聞こえないから。結局押しまくった伸行に折れる形で、耳が聞こえないことを隠して会うのだけど、最終的にバレる。
しかも最悪なバレ方をする。


耳が聞こえないことで、世の中に対して卑屈になっているひとみは、伸行に対しても「どうせ私のことなどわからない、健聴者(耳に障害のない人)には耳の聞こえない私の気持ちなんて理解できない」と傷つけたりささくれだったりする。

それに我慢ならなくなって行く伸行は、
「世界で自分だけ傷ついているような顔をするな」
と言って父が死んだ時のことを話す。それは両親に愛情たっぷりで育てられることが当たり前のひとみには、理解しがたい苦しみだった。

感想

この本の主題は、「人間の苦しみというものは本質的には、自分以外の人間には理解できるものではない」ということだと思う。
障害を持つ人と健常者の恋愛に絡ませてよくここが書かれていると思う。

ひとみは誰にも理解できないだろうというのを武器にして相手を傷つけるが、それは耳の聞こえないことで散々周りに傷つけられた自分には許されることだとどこかで思っているような感じだ。
だが同じことを伸行にして返されて、自分のしていたことは間違っていることに、傷ついているのは自分だけではないことに気付く。



人生における苦しみや辛さなんてものは、障害があるなしに関係ないんだろうし、自分の苦しみが結局一番苦しい。
それは議論するべき対象ではなくてそこにある真実だと思う。
障害のある人間は差別されて、傷ついて、それはもしかしたら健常者の人よりも辛いなんて思うのかもしれないけど、それは違うのだとこの本は言っているのだと思う。
差別するな、なんて言うよりも、本当の意味での平等、誰もが傷ついてるし誰もが傷つけてるんだっていうこと。


それだけ言うとなんだか誤解を与えそうな感じがして、うまくかけないなぁと思うのだけど、だから苦しむな、っていう話では決して無いということを言いたい。
読んでもらえればきっとわかると思うのだけど。
苦しむことを何かのせいにして、誰とも交わらないように他人を突っぱねていたら、苦しみはいつまでも変わらない。
苦しみがあることは変わらないけど、人と寄り添うことで、強く生きて行くっていうこと。この2人は恋愛という形で、強く生きて行く決心をしている。


この本はそれを伝えるのに十分な内容だと思う。
この本読んで、みんなで強く生きよう。

って、なんだか綺麗事みたいになってしまったけど、そういう本。