アイスクリームと獅子

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忍びの国 感想

3回も見てしまいました。「君の名は。」の2回を超えた。2回目泣きました。
普通にとても良い映画だったなと思います。
軽めの文体です。


以下ネタバレ含みます








まず思ったのは、大野智が声だけで演じることのできる役者だということ。信雄(知念侑李)に迫るシーンが本当に怖かった。
「言いやがったな」以降の。感情と表情すっと消すの上手すぎて。


私ああいう無門(大野智)みたいなキャラクター凄く好きなんです。少年マンガのチート的キャラ。
絶対的な強さを持ってんのにわざわざ出さない、出すときの動機は金という狂気っぷり、戦いの余裕、絶対に負けないでしょっていう信頼感。
江戸川コナンはなにやっても死なないよね、みたいなやつ。

ただそれが、少年マンガと違うのは、普通無門みたいなのは敵キャラクターとして出てきて、主人公を煩わせつつ最終的には負けるタイプのキャラだってこと。
無門には志を共に戦ってくれる仲間もいないし、戦う理由は金っていうなんとも…な理由だし。
だけどこの映画では無門が勝つし、私たちは知らず知らず悪役側を応援してしまっている。
これがこの映画のめちゃくちゃ面白いところなんじゃないのかと。思うわけです。



で、1番の見どころ、下山平兵衛(鈴木亮平)との川。この川のために3回も観に行ったようなもん。この川だけにお金払える。とにかくすごい。
アクション好きにはたまらないし、これも単なるかっこいい戦闘シーンってわけじゃない。
あそこで無門と平兵衛は心を通じ合わすわけで。その無門の繊細な変化が本当素晴らしく表現されてた。一言もセリフないのに、彼らの気持ちがものすごい伝わってしんどかった。

剣の取り合い。無門が平兵衛からクナイを奪って構えた時のあの表情、狼にもあんな目はできないでしょ。
平兵衛が背中にあるもう1つの剣でどうにかしようとした時、一瞬無門の目が映る。あの目。あの目を私は忘れないです。もはやあの目を見るためだけに金払える。
平兵衛の気持ちが通じたのは間違いなく、それに対して無門は「生半可な気持ちでこいつを殺してはいけない」と思ったのだろうか…。「とどめをさすぞ」というような、「楽にしてやる」とも取れそうな、いやどんな言葉にも表すことのできない"言葉"を、あの人は目で表現していた。
目だけで演じられる役者でもあるんだな…。



以下は映画を観てない方は読まないほうが良いかと。







で、ラスト。びっくりしたよほんとに。
お国が無門を守ろうとしたが故に、守ろうとしたが故に(大事なので二回言った)、下忍たちに殺されてしまう。
無門の叫び声。痛い。こっちの心まで痛い。
小さな時に買われてきたから名前などないと言って涙する無門。
いろんなことを抱え込んで抑えてきたと無門のことを言うのは演じた大野さんだけど、ほんとにその通りだなと思います。そこらへんは原作のほうに文章で書いてあるけど。

そしてこの緊迫のシーンを目前にしていたはずの下忍たちは、こともあろうに子茄子を奪い合おうとする。
そして気づく。
「わしは、なんと言う馬鹿者じゃ…」
冒頭の下山平兵衛と同じセリフを繰り返す。自我の目覚め、人間としての目覚め。ここが今作のキモだと私は思う。



そして実は、これを観ている私たちも、ここでやっと気づくんじゃないのか?と。忍びたちの異常さに。忍びたちが憎むべき悪役キャラだということに。
憎みきれない部分もあるけどね。そういうところが面白いです。勧善懲悪とは言えようもないストーリーの展開の仕方に脱帽です。



なにをもって人間となり、なにを大事にして生きるのかというテーマを、エンタメの中にまさに土遁の術のように潜ませた製作陣に拍手を送りたい。